『レオン』とその仲間たち【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」28冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」28冊目
そんな飛ぶ鳥落とす勢いの『レオン』を、他社がただ指をくわえて見ているはずがない。同じく30代後半~50代の“大人の男”=高所得層を対象読者としたファッション誌、ライフスタイル誌が続々と創刊された。
とりあえず私が把握しているだけでも、『サファリ』(日之出出版/2003年11月号)、『ターゲット』(講談社/2004年フラウ増刊11月8日号)、『ジェントリー』(ハシェット婦人画報/2004年11月号)、『ランティエ』(角川春樹事務所/2005年2月号)、『ウオモ』(集英社/2005年4月号)、『ドアーズ』(ネコパブリッシング/2005年5月号)、『ストレート』(扶桑社/2004年11月号)、『ゲーテ』(幻冬舎/2006年4月号)、『オーシャンズ』(インターナショナル・ラグジュアリー・メディア/2006年4月号)、『ザ・カバー・マガジン』(トランスメディア/2006年グリッター4月号増刊)……と、枚挙にいとまない。

ただし、渡辺謙が表紙の『ジェントリー』は正統派の紳士をめざす感じで、クラシックカーが表紙の『ストレート』はモノ雑誌っぽい。『ランティエ』は「退屈でない人生を求める男たちへ」、『ドアーズ』は「不良オヤジの扉を開け!」とキャッチコピーはそれっぽいが、前者は大和魂的な誌面づくりで、後者は「ちょい不良」ではなく“ガチ不良”なので、ちょっと違う。『ゲーテ』は「24時間仕事バカ!」のコピーが示すとおりビジネス寄りだし、元『レオン』スタッフが立ち上げた『オーシャンズ』は家族愛を前面に打ち出し“ちょいモテ”路線からは距離を置く。
そんななかで、表紙イメージとコンセプト的に“『レオン』インスパイア系”と思われるのが、『サファリ』『ターゲット』『ウオモ』『ザ・カバー・マガジン』だ。
『サファリ』創刊号の表紙モデルはジョン・カビラ。「いつも海を忘れない男たちへ」とのコピーはサーファー雑誌のようだが、〈実は1960~70年代のアメリカのサーファーの間では“Surfing safari”という言葉がよく使われていたのです。これは、いまで言うサーフトリップで、未知なる波を探し求めて旅に出ることを意味しました〉とのことで、誌名も〈読者諸氏とともに「未知なる世界を探し求めての旅」へ出かけるという意味合い〉とか。それゆえ誌面にはヘビーデューティ風味が漂うが、「悪漢オヤジはなぜモテる!?」と題した特集があったりして、やはり「ちょい不良」の影響を感じる。
『ターゲット』は男女の白人モデルが表紙で、「洋服選び、『恋愛』を忘れていませんか?」を特集タイトルに掲げる。各記事の見出しも「目指すは金も力もある『色男』の教養(エッセンス)」「色男はスーツで遊ぶ」「知性は色気、色気は知性。性を知ると書いて知性」「ベルベットJKで色気全開! イイね!」と色気推しがすごい。「性を知ると書いて知性」とは、思いついてもなかなか言えない。数ある後続誌の中では最も『レオン』に近かったのではないか。
『ウオモ』の表紙も白人男性モデルだ。〈UOMOのキャラクターとして鮮烈デビューのアンドレ。ハイブランドのキャンペーン等で活躍するスーパーモデル〉らしい。メイン特集は「『オトナ・ジャケット』で華あるスタイル。」。ここで言う「オトナ」とは何歳を指すのかと思ったら、「40代、男の色気は『艶肌』で決まる!」なんて記事があるので、やはり40代が対象なのだろう。島田雅彦「40の手習い」という連載もあった。とはいえ、全体的にギラギラ感がなく、草食男子という感じ。近年は「40歳男子」を打ち出している。
真木蔵人が表紙を飾るのは『ザ・カバー・マガジン』。「不良モードなオトコの“カッコよさ”を追求!」というコピーにはぴったりの人選と言えよう。ただ、創刊の辞によれば読者対象は20代~30代前半のようで、〈同世代の男性と女性では、圧倒的に女性の方が大人びていることが多い。しかし、彼女たちがオヤジ連中と遊んでいるのをボーっと眺めていていいのだろうか。当然オヤジ世代の真似をしてみたってダメ〉との記述もあるので、『レオン』インスパイアというより“打倒レオンオヤジ”なのかもしれない。

